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主任司祭より

『質問 パパは天国にいるの?』      司祭 アンドレア 松村 繁彦

2023/10/04


『死んだパパは神様を信じていなかった。その理由はわからない。死んだパパは僕たち兄弟4人全員に、洗礼を受けさせてくれた。その理由もわからない。そして一番わからないのは、いまパパが天国にいるかどうか。僕たちに洗礼を受けさせてくれたパパが、天国に行けずにいまもなお彷徨っているのであれば、僕にとってこれ以上怖いことはない。洗礼とか信仰とか。パパがそれを持っていなかったことが僕を不安にさせている。パパは良い人だった。それはきっと間違いがない。だからこそ何が正しいのか、いまパパはどこにいるのか、僕はそれを知りたいと思っている。』

 

2018年4月15日、聖パウロの十字架教会に教皇フランシスコが訪れた時の出来事である。質疑応答ができるというので一人の少年は立ち上がった。教皇に問いかける順番が与えられ、少年は教皇がいるステージの前で待ちながら考えていた。

 

『神様を信じていなかったパパのことを、教皇に聞いていいのだろうか。神様を信じていなかったパパのことを、悪い人だと言われるだろうか。パパが天国に行くことが出来ていないのであれば、それを教皇の口から聞くことが、何よりも恐ろしい。』『やっぱりできません。』

 

マイクの前に立ち、笑顔でそう告げたが、同時に我慢していた恐れが涙となって流れ出た。

側近の神父が少年を抱き寄せ、泣いている顔を隠した。しかし教皇フランシスコは少年を呼び寄せ、ステージに上げ、自ら彼を抱きしめた。そして彼の口元に教皇が耳をそばだて、聞こうとされたその姿に、少年は恐る恐る口を開いた。

 

『僕は怖かった。パパが天国に行けないかもしれないことを。死んだパパが、一人で恐ろしい場所で震えているかもしれないことを想像すると、怖くて仕方がなかった。』『お父さんはいま 天国にいますか?』

 

この質問に教皇は優しく受け止め、応えた。少年は欲しかった慰めの言葉をもらえて、喜びの涙の中で教皇と抱き合った。

 

さて、ここで質問ですが、教皇が何と応えたのかを聞きたいのではありません。あなたならどのように応えますか。既に知られているお話ですのでそれを伝えるのは簡単です。しかし誰かに教えてもらうことから、自ら考えることに慣れていかなければなりません。自己信仰養成です。

さぁお隣の人と考えて分かち合ってみてください。答えは一つではありません。

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