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パトリシアが選ぶお薦めの1冊 Recommended Books

エディット・シュタイン 小伝と手記

この本は、ユダヤ系ドイツ人で、ユダヤ教から後にキリスト教に改宗し、ユダヤ人であったがために、第2次世界大戦中にアウシュヴィッツ強制収容所のガス室に送られて死亡した、カルメル会修道女である聖人エディット・シュタインのことが書かれています。(聖人名は聖テレサ・ベネディクタ(十字架の)おとめ殉教者です。)
優秀な哲学者エディットが、真理の探究を続けていくうちに、ある時『アビラの聖テレサの自叙伝』という本に出会い「これこそ真理だ」と確信します。そしてその時から、アビラの聖テレサが入会していたカルメル会の修道女になる望みを抱き続けます。それらがユダヤ教徒であるエディットが、カトリックに改宗する動機になりました。

4才の時にエディットは父を亡くします。そのことも含めた家庭の事情により、エディットは改宗すること、修道院に入ることなどを母に話す事が、とても辛く困難であると度々感じます。後半の自叙伝の中で、彼女の言葉によって、その時の心の中が語られています。
この時代にユダヤ人であるエディットは、修道院に入ってからも苦労します。カルメル会に迷惑がかからないようにと、ドイツからオランダの修道院へ移ります。オランダに移ったエディットの所へ、母が亡くなった後にカトリックに改宗した姉ローザが、カルメル会第3会員となって外部受付係として来ました。次にスイスに移ろうとして失敗し、姉妹は一緒に連行されます。

エディットは、自分自身が主イエス・キリストと聖母と同じ血統に属しているということに喜びを持っていました。ユダヤ人迫害に対しても、ユダヤ人の使命にかかわることで、神は諸国民の救いのためにユダヤ人を選ばれたと考えていましたし、修道院に入る前に偶然、出会った姪の、「どうしてこんな時に出かけるの?」という問いかけに「そうするのは、自分の民と家族を見捨てたいからではないのよ。わたしはいつでもあなたと一緒にいるわ。修道院に入ることが、世界のできごとから逃げることだと思わないでね。」と話していました。そしてエディットは、神の許しなしには、何事も起こらないということも知っていました。
エディットは修道女になった時、「十字架のテレサ・ベネディクタ」という修道名を選びました。過ぎ越しの十字架、愛と神秘を表しています。エディットにとって十字架の神秘は、迫害されているユダヤ民族の悲劇的な運命と、自分自身の存在にも圧し掛かっている身近な危険をも意味していました。

神の計らいの中で歩みを進めていたエディット。アビラの聖テレサを通して、親しく身近におられる神を知り、エディットにとって全人類のための祈りという新たな世界が開けました。「毎日特別な使命を神から受けるために、ほかに何もすることがないかのように、朝から神と親しい交わりに入ることが大切です。自分をまったく神の道具と思いなさい。そして、仕事においては、あなたの中であなたを通して神がはたらいてくださるように力をお尽くしなさい」とエディットは私たちに語りかけます。今、私たちの生きているこの時代、エディット・シュタインとその時代背景を知ることは、とても意味のある事だと思いました。

 

コンラッド・ド・メーステル 著・福岡カルメル会 訳
エディット・シュタイン 著・西宮カルメル会 訳
女子パウロ会 刊/定価 1000円+税

更新日:2016年12月14日


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執筆者

パトリシア

本が大好きな広報部員。夏は十勝にある広大な農地で畑仕事に精を出し、札幌と十勝を行き来しながら、晴耕雨読の日々をおくっています。
洗礼名について/パトリックの女性名。聖パトリックはシャムロック(アイルランド語でクローバーの意味)が象徴。アイルランドの守護聖人。



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