影に対して ―母をめぐる物語―
本書は、このたび発見された「影に対して」を中心に、母をめぐって書かれた著者の作品から、編集部がセレクトしたものです。各作品間には、実際の出来事に材を取りながら、家庭の状況などについて食い違う記述があります。読者の方々にはまず何よりも、著者が長い時間をかけて、少しずつ変化や深まりを見せながら、母について書き継いだ作品群を味読していただければ幸いです。
-編集部―
「心の時代」という番組で、遠藤周作さんの著作がいくつか紹介されていました。これまであまり読んだ事がありませんでしたが、「深い河」「おばかさん」と「影に対して」を読んでみました。どの本にも、信仰を含め色々なことを考えさせられました。
「影に対して」は7つの短編小説で一冊の本が成り立っています。一通り読み終えると、この本の中の〝母上〟は色々な顔を見せるのです。私の中で、少し「?」がありました。小説だから?などと考えていたら、最後の付記に、冒頭にのせた編集部からの言葉がありました。
この本の中でも、主人公を始めとする登場人物が、とても魅力的で豊かです。「こういう考え方もある。」とか、「こんな風に言われたら、こうなっちゃうよね。同感!」と思ったりの、あるあるもあるし。「知らなかったな。」もあるしです。そして、私の中に、本の中の人物と同じように心が痛むこともありました。一人ひとりの個性が豊かというのか、人の心の奥にあるものの描写が豊かなので、おもしろく読めます。が内容は、楽しいものではありません。
飼い犬の話に、子供時代、主人公がどれだけ精神的に助けられていたかが出てきます。ペットを飼われている方、飼った経験がある方なら、どなたも理解できるのではないでしょうか。また、ペットは可愛いだけではないということも・・・。
遠藤周作さんの本を読んでみて、好き嫌いとかではなく、一度読んでみたらとおすすめしたいのです。
著者の信仰の深さ、考え方。私はこの小説を読むことで、小説の楽しさを味わうことができました。
最近まで協力司祭として、真駒内教会にお住まいになっていた神父様は、90才になっても色々な本を読んでいらして、「色々な気づきをもらえるから本を読みなさい。」とおっしゃっていました。「神父様、本当だわ~。」と思っている今日この頃です。
遠藤 周作 著
新潮社 刊
1600円+税
更新日:2022年9月8日
執筆者
パトリシア
本が大好きな広報部員。夏は十勝にある広大な農地で畑仕事に精を出し、札幌と十勝を行き来しながら、晴耕雨読の日々をおくっています。
洗礼名について/パトリックの女性名。聖パトリックはシャムロック(アイルランド語でクローバーの意味)が象徴。アイルランドの守護聖人。