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パトリシアが選ぶお薦めの1冊 Recommended Books

表紙

シスター・ヒロ子の看取りのレッスン

私の母が3度目のガンの告知を受けた頃に、この本のタイトルと表紙の写真に思わず目がとまりました。著者と私は、同世代。家族構成も父・母・娘2人の4人家族。本は、長崎にある聖フランシスコ病院のホスピス病棟のシスター・ヒロ子と著者の出会いから、著者が母を見送るまでの日々が、書かれています。ホスピス病棟では「手」にすごく気を配ります。手の動きに気を配るということは、一つひとつの動作に「心」を込めるということなのです。そんな動作の積み重ねが、ホスピス病棟を包んでいる優しさの源なのかな?
「誰でも死ぬときは一番輝いていた頃の姿を見せてくれるのよ、みんなへの感謝」というシスター・ヒロ子の言葉。

 

長女である著者は、長崎から距離が離れている鎌倉で生活をしています。その事を理由に実家の状況を、見て見ぬふりをして、逃げていました。ある日、母から「助けてほしい」と電話があり、すぐに長崎へ帰ります。そこからは、後悔そして父との言い争い。その中でホスピスを探しますが、母の希望する教会のあるホスピスは1カ月待ち。著者はホスピスに出かけ、自分の話を聞いてもらい、申し込みをします。するとなんと信じられないことに、1週間で入所できることになりました。

 

この病院では、早朝シスター・ヒロ子と共に司祭が、信者には、ご聖体を、信者でなくても祝福を希望する人には祝福を授けるために、小さな鈴をチリンチリンと鳴らしながら歩いています。著者の母弘子さんも信者ではないけれど、祝福を願いました。

 

私たちは様々な場面で、どうしても自分の見方でしか、見る事、考える事ができなくなることが多いです。シスター・ヒロ子は著者に、母弘子さんを理解するために、たとえとしてラジオの周波数を合わせるように、チャンネルを変えるとか、メガネをかけ替えるなどの方法を伝えます。この事は、私たちの日々の生活にも当てはまる事とおもいます。入院中(ホスピスにいる事が、この言葉に当てはまるか、わかりませんが)母弘子さんは、洗礼を受けます。父はそのことを知り、怒りますが、後に許します。人は日々、心の中で許せないことと闘っている。そんな時に、その出来事を通して「許し」について学びます。「別の視点でものを見ることができたなら、きっと違う世界の扉が開くことに、驚いて気がつくのだろう。」

 

「人間って、なんでも複雑にしてしまう生き物なのよね。でも感情を言葉にして祈りながら受け入れると、シンプルになれたりするのよ。祈る時間は人間が心を取り戻す時間なのよね。」と看護師長に言われます。看護部長であるシスター・ヒロ子は、「祈りは貯金、自分の口座ではなく、人の口座に貯める貯金。あなたの気持ちがラクになりますようにと祈ったから、あなた名義の貯金通帳に貯まる。」と言います。
母弘子さんは帰天されます。その時の様子などは、是非、ご自分でお読みになって下さい。この本は、難解な本ではないけれど、私は読む度に気づきがもらえました。看取りレッスンとタイトルにはあるけれど、それだけではないのです。

 

小出 美樹    著
KADOKAWA 刊
1300円+税

更新日:2020年8月25日


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執筆者

パトリシア

本が大好きな広報部員。夏は十勝にある広大な農地で畑仕事に精を出し、札幌と十勝を行き来しながら、晴耕雨読の日々をおくっています。
洗礼名について/パトリックの女性名。聖パトリックはシャムロック(アイルランド語でクローバーの意味)が象徴。アイルランドの守護聖人。



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