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パトリシアが選ぶお薦めの1冊 Recommended Books

『森の静けさの中で』―カルメル会の伝統における祈りー

この本は「神と出会う」その神秘の祈りの旅路が、一人きりではなく、私たちの周囲には、たくさんの教えや導きがあふれていることを、カルメル会の霊性、諸聖人を通して伝えています。

「祈りは私たちの心がけー心からの愛情をこめて、絶えず神に立ち返ることーです。」と序文にあります。カルメル会の諸聖人は、祈りの旅路のあらゆる局面において必要と思われるものを豊かに持ち、長い道のりにうんざりし、悪天候に見舞われて途方に暮れる旅人のようにためらう祈りの初心者たちを、力強く支え導いてくださる。特に先頭に立って、アビラの聖テレジアと十字架の聖ヨハネは、余すところなくその著書の中で語りかけています。

カルメル会の諸聖人の言葉を目にしたり、耳で聞くことはあってもわずかです。この本の中では、家族の言葉を紹介するかのように「こういう時には、こうすると良いよと言ってたわよ~」。そんな感じで、読んだ私たちに、諸聖人の体験や言葉が入ってきます。遠い存在ではなく、近くにいる方々として感じます。

この本は、祈りの初心者と思う人々のものだけではありません。カルメル会の存在理由としての使徒職についても書かれています。

観想の祈りに専念している人は、同時に多くの人との交わりにあずかっていることとあります。聖テレジアは当初、自分の霊魂の救いを求めて躍起になっていましたが、次第に神の民一人ひとりが連帯してゆく必要性に目覚めて、それに参与しない限り、祈りの小道を歩んだところでなんの役にも立たないことに気づきました。神と深く一致するにつれて、生きとし生けるものは例外なく神のものであると悟ります。

観想、祈りの生活、神との交わりとは、自分の活動過多、注意散漫、そして内心の抵抗などの経験を通して自分を知り、神が実に気が遠くなるほど人間をお待ちになられるお方なのだと知ることです。自分をごまかすことなく、ただ神に応えてゆくだけです。三位一体の聖エリザベトは「自分の内なる沈黙が三位の神の住まいとなり、そこで人は三位と親しく交わる」と言い、十字架の聖ヨハネは「神は人間の深みの内に隠れておられる」と言います。聖テレジアは、自分を知ることの大切を語ります。多くの場合、謙遜に絡めて語っています。

謙遜であるということは、自分という存在が大地にしっかり根ざしていること、自分が何者であるか十分わきまえていることです。自分の過ちや弱さに直面した時、これが自分のありのままの姿なのだとあっさり認めてしまうことができれば、神から引き離されることはないし、そもそも神は、私たちのことをあらかじめ、しかもすべてご存じですし、神からの光のもとに自分自身のことを知り、受け入れようとすれば、神との親しさをより一層深めてゆくことができるとこの本には書かれています。

新しい年が始まりました。今年もこの旅路が始まりました。自分と出会う旅、神と出会う旅です。共におられる神がいつも私たちを導いてくださいます。

 

シスターメアリ・マコーマックO.C.D 著/福岡カルメル会 訳 /サンパウロ 刊/定価 1200円+税

更新日:2018年1月23日


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執筆者

パトリシア

本が大好きな広報部員。夏は十勝にある広大な農地で畑仕事に精を出し、札幌と十勝を行き来しながら、晴耕雨読の日々をおくっています。
洗礼名について/パトリックの女性名。聖パトリックはシャムロック(アイルランド語でクローバーの意味)が象徴。アイルランドの守護聖人。



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