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パトリシアが選ぶお薦めの1冊 Recommended Books

「長崎の教会」平戸、長崎、五島、祈りの地を巡る

長崎の各地にある教会群の写真集です。

長崎の教会は、およそ150年前に長崎に寄留していた外国人のために作られたフランス寺と呼ばれた大浦天主堂から始まります。(このあたりのお話は、以前ご紹介した「サンタ・マリアのご像はどこ?」に詳しく書かれています)本の中にある資料の地図を見ていると、この地域の、この広さに、これだけの教会の数があるということに驚くと同時に、信仰の自由を得た人々の喜びの大きさがうかがい知れます。

本を開くと、高見三明長崎大司教区大司教の書かれた文があります。長崎の教会を巡礼する時の心構えと言えば、大げさですが、心の片隅に置いて教会を巡礼するならば、違う見方、気づかなかったことを見つける楽しさがありそうです。次に目次がありその後の、長崎純心大学学長のSr.片岡瑠美子先生の書かれたものを読み進めると、長崎の教会の歴史と信者の心を知ることができます。

 

カトリック教会には、地名とは別の教会名があります。たとえば、真駒内教会は“聖母の汚れなきみ心”教会と言って、聖母マリアに献げられ、聖母マリアを保護者としている教会です。

長崎市内の教会を少し見てみましょう。大浦天主堂は、二十六聖殉教者の教会です。1587年、西坂で6人の外国人司祭、修道者と20人の日本人が、十字架に縛り付けられ、槍で刺され命を落としました。二十六聖殉教者のことは、ヨーロッパでは広く紹介されていましたので、フランス人のプチジャン神父は、二十六聖殉教者にこの教会を献げました。二十六聖殉教者の処刑場あとには、二十六聖殉教者の一人、メキシコ出身の聖フィリッポに献げる教会が、1962年に記念碑、資料館と共に献堂されました。浦上天主堂には「信徒発見」という出来事、浦上四番崩れ、被爆という歴史があります。この本に書かれていることを読んでいくと、この3つの教会が信仰という歴史の中で、つながっていることに気づきます。

 

教会の外観、内部の写真と共に、お聖堂の中を掃除している方々、オルガンを弾いている方、元気な少年、畑仕事に精出すシスター、祈っている方々。そんな日常の営みがあちこちにあります。

どの教会も信者たちが、経済的に裕福ではない中で、なによりもまず教会を!と、司祭、信者が手造りで建てた所も多く、あたたかみと個性が、ひとつひとつの教会の写真を通して感じ取れます。

この本は各教会の写真だけではなく、教会の歴史、建築の説明もあります。ところどころに、日本史の中でのキリスト教の宣教の歴史、資料もあり、様々な事を知ることもできます。教会訪問の基礎知識も書かれているので、初めてお近くの教会へお出でになる時にも参考になると思います。

なお、天主堂の天主とは神のことです。

この本を読んでいたら、日本のカトリック教会の始まりをよく知る事もできますし、行ってみたいと思ってしまう本でもあります。いつか、行ける時のために、ゆっくり心の中での巡礼から始めませんか?!

 

 

吉田 さらさ 文/飯田 裕子 写真/JTBパブリッシング 刊/1600円+税

更新日:2016年7月27日


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執筆者

パトリシア

本が大好きな広報部員。夏は十勝にある広大な農地で畑仕事に精を出し、札幌と十勝を行き来しながら、晴耕雨読の日々をおくっています。
洗礼名について/パトリックの女性名。聖パトリックはシャムロック(アイルランド語でクローバーの意味)が象徴。アイルランドの守護聖人。



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