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主任司祭のメッセージ Message from parish priest

『家庭でのいのり』によせて

2019年04月03日| 司祭 加藤 鐡男

 札幌教区で、子ども・青年たちへの信仰の伝達を熟慮したうえで、「家庭での祈り」が大切であるとの典礼委員会での結論に、キャンペーンのパンフレットを作成し各教会に配布されました。その裏の片隅に、画家 林竹次郎「朝の祈り」の絵画の一部が使われていました。

 この絵は北海道立近代美術館が所蔵し、その絵はがきは大人気になっているほどで、昔懐かしいちゃぶ台を囲んで、家族が朝の祈りをしている場面を描いた作品です。朝の光が左手の窓から差し込み、聖書の上に手を置いて祈る少年は、下宿をさせていた男性をモデルにしていますが、本当は作者自身を描きたかったようです。

 画家 林竹次郎は宮城県に生まれ、仙台師範学校へ入学した在学中にキリスト教の洗礼を受けました。上京して東京美術学校へ入学し、三年後に東京美術学校の特別課程を卒業すると、北海道師範学校の教諭になりました。二年後に退職し、札幌第一中学校(現道立札幌南高等学校)の教諭として28年間美術を教えました。一中の退職後には、藤高等女学校で14年間絵を教えました。旧制札幌一中の図画の教師をしている時の1905年に、第一回文部省美術展に「朝の祈り」が入選しました。

 末っ子の息子の文雄は医者になり、東村山のハンセン病病棟に行くことを希望し、父は反対しましたが、文雄は反対を押し切ってそこへ行きました。幾度も文雄にお見合いを勧め その仕事から離れさせようと図りましたが、ことごとく失敗しました。やがて文雄が結婚すると、息子の仕事に理解を示して、鹿児島のハンセン病療養所にいた文雄の家に、妻こうと一緒に札幌から転居し、文雄の家を「楽園」と呼んで二年後に帰天するまで文雄と共にハンセン病患者を励まし、絵画の個展を開いて、売り上げ金をハンセン病患者に捧げました。

 この林家の「小さくされた者」への支援は、幼いころからの祈りの大切さを私たちに示している良き例だと思います。現在の家庭では、全員で食事を一緒にすること自体が困難にもなってきていますが、まずはできることから始めることが大事だと思います。目覚めたらベットの上で、個人個人で神への感謝のいのりをすること、寝る前には同じようにベットでその日の全てのことを感謝しながら良き眠りに導いてくださいと祈ることをやってみてはいかがでしょうか。

 人間は、さまざまな人との関わりの中で生かされていることを知っている私たちは、それらの全てに感謝を示すことは当然のことだと思います。

「家庭での祈り」が家族一人ひとりに根付くように、日々の五分間が、私たちにとって、とても大切な時間となりますように。


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